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底辺ナースすっとばす

10数年ナースとして働き、現在大学院在学中です。ワーキングホリデー経験、元バックパッカー。仕事、日常、旅行などを中心にまとめています。少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです!

山谷ボランティア体験記①

山谷とは(wikipediaより)

 山谷(さんや)とは、東京都台東区北東部にあった地名。現在の清川・日本堤・東浅草付近を指した。一時期、遊郭が置かれたことから、吉原遊郭を指す場合もあった[1]。安宿が多かったことから労働者が集まるようになり、東京都台東区荒川区にある寄せ場(日雇い労働者の滞在する場所、俗に言うドヤ街)の通称(旧地名)として使われる様になった。交通の便がよく、格安ホテルがあることから、2000年代以降は、バックパッカーを含む訪日外国人の宿泊地としても人気を集めている。

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城北労働・福祉センターへ

 今回、山谷で20年間活動している訪問看護ステーションが主催する路上生活者、生活保護受給者を対象とした健康相談にボランティアとして参加させて頂いた。ステーションのスタッフの皆様に挨拶を済ませ、自転車をお借りして城北労働・福祉センターへ赴いた。

 労働・福祉センターの外観は綺麗に塗装され、大阪のあいりんとは全く違う雰囲気を醸し出していた。建物の地下へ案内され、地下の娯楽室へ行くと多くの利用者がいらっしゃった。聞くところによると、福祉センターは新型コロナウイルスの影響で2ヶ月閉鎖されており、多方面から早期の再開を願う声があったとのこと。福祉センターが再開された後、健康相談を再開したとのことであった。

 その話を聞いて、再開を願うほど、この地域にとって必要な施設であることは分かったが、皆が福祉センターの再開を願う理由が何なのか気になった。

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健康相談の内容

健康相談に参加する職種は医師、看護師であった。健康相談の業務は

・希望する利用者の健康チェック(体温、脈拍、血圧測定など)

・利用者との雑談

・希望する利用者に対する受診勧奨と医療資源紹介

・希望する利用者へ風邪薬などの市販薬の配布(1日分程度)

などであった。

 

私が感じた利用者さんの雰囲気

 椅子に座って静かにテレビを見ている人、熱湯を使ってカップラーメンを食べている人、ほのかに酒の匂いを漂わせ健康相談に来る人、身体の不調を訴えている人、寝ている人、本を読んでいる人など各々自由な過ごし方をされておられた。福祉センターを利用している人はほとんどが生活保護受給者、路上生活者とのことであった。主観的な印象ではあるが、これまで西成で看護をさせて頂いていた患者さんと同じように、ほとんどの人が穏やかで人懐っこく感じた。

 

健康相談に参加された医師のお話

・ここ数年路上生活をしている人数は減っているが、リーマンショック時などは一時的に路上生活者や支援が必要な人が増えた。

新型コロナウイルスの影響でこれから支援が必要になる人が増えることが予想される。実際に新宿や池袋などの都市部では若い非正規雇用労働者が増えてきている。しかし、現状では山谷では大きな変化は見られない。

・福祉センターや支援者の元に来てくれる人々はまだ状態が把握できるが、中には支援者の前には姿を現さない人もいる。姿が見えない人の支援は簡単にはいかない。(女性の路上生活者、引きこもりなど)そのような人へのアプローチは熟練した支援者でも難しいとのこと。自分の中で課題として大きく心に残った。

・路上生活者は日本国内の難民と思って支援しなければならない。

・海外の国連の難民キャンプなどの施設の方が日本の路上生活者支援施設より設備は整っている。

 

その他の山谷の施設見学

 健康相談の合間に自転車をお借りして、山谷のドヤ街や施設を見学させて頂いた。ドヤ街と一口に言ってもオーナーによって経営の方針や入居者への関わり方は異なるとのこと。見学させて頂いた施設はオーナーが、入居者の健康を気遣い、異常があれば医療者につなげるということをされていた。ドヤの室内は3畳一間で布団・エアコン・テレビが設置されていた(喫煙可)。

 その他に、癌の末期の方などを看取るためのホスピスなども見学させて頂き、地域ですべての住人を最期まで見届ける活動の一部を見ることができた。街を歩く人は若者、子連れの夫婦、高齢者、酒を飲んでいる人など皆が共存して暮らしている様子であった。

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健康相談を体験して感想

 今回、健康相談のボランティアに参加して、実際に福祉センターを利用している人の数名と関わることができた。体験の中で、利用者の方々の言動から生活する上での信念のようなものを感じとることがあった。

 利用者のほとんどは何らかの理由があって、山谷に住んで路上生活をしたり、生活保護を受給している。ほとんどの人は自ら望んでそのような状況に陥っているのではない。彼らを取り巻く社会が影響していることを実際に利用者と触れ合うことで感じた。

 公衆衛生を学ぶ身として、社会を変えるためには何ができるのであろうか。少なくとも現時点で自分にできることは彼らのような人々の声を聞き、少しでも多くの人に彼らの声を届けることではないかと感じ、山谷を一旦後にした。

 またここに戻ってきたいと思いました。

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