生活保護のお話
生活保護について調べる理由
医療者であればほとんどの人が出会ったことであるであろう生活保護受給者。現場で出会う彼らは生活習慣を改善せず何度も病院のお世話になったり、時に横柄な態度を取ったりと…おそらく、私を含めたほとんどの医療者それぞれが彼らに対して何かしらのイメージを持っているのではないでしょうか。しかし、ここ数日、山谷で活動をしている間に肝心の生活保護制度について、詳しく知っているわけではないことに気づきました。今回は、生活保護制度についてまとめてみたいと思います。
社会保障の中の生活保護制度
高齢者、低所得者、妊産婦、障害者など様々な人が生活しており、全ての人が「社会保障」を受けながら生活しています。「社会保障」は大きく3つに分類されます。年金や医療保険などの「社会保険」、障害者や高齢者などを支える「社会福祉」、生活困窮者などに対して最低限度の生活を送ることを支える「公的扶助」の3つです。生活保護制度は「公的扶助」に該当します。生活保護は法的に生活保護法に基づいて行われています。
生活保護制度は自らの資産や能力全てを活用しても生活を維持できなくなった世帯に、国の責任において「最低限度の生活」を保障し、自立を助ける制度です。「社会保険」などを受けてもなお、生活に困窮している人を対象としており、最後のセーフティーネットとも呼ばれています。
生活保護の種類
生活保護は8つの扶助で構成され、必要に応じて1種または複数の扶助の組み合わせによって給付されます。
扶助 |
内容 |
給付形態 |
医療扶助 |
治療費・入院費 |
現物 |
介護扶助 |
介護サービス |
現物 |
生活扶助 |
衣服や光熱費など生活に必要な費用 |
現金 |
教育扶助 |
義務教育に必要な学用品費用 |
現金 |
住宅扶助 |
家賃など |
現金 |
出産扶助 |
分娩に必要な費用 |
現金 |
生業扶助 |
職業技能習得費用など |
現金 |
葬祭扶助 |
葬祭に必要な費用 |
現金 |
それぞれの扶助には国が定めた基準があり、支給額などは世帯構成や年齢、地域差によって設定されています。
詳しくは厚生労働省HPに記載されています。↓
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html
生活保護の申請方法
各自治体の福祉事務所と呼ばれる窓口で申請が可能であり、申請自体は誰でも可能です。福祉事務所は一旦申請を受理し、預金・能力・あらゆるもの・扶養義務者などといった生活状況の調査を行い、必要かどうかを判断します。必要と判断されれば、申請者の生活状況に応じて支援が行われる流れとなっています。
生活保護の現状
2020年6月現在、被保護実人員(生活保護を受けている人)の総数は2,055,531人で、保護率(人口百人当たり)1.63%です。
その内の約半数が高齢者世帯です。(約54%)
※厚生労働省HPより作成
被保護者数の推移から見えること
被保護者の総数は増えています。これは一体何を意味するのでしょうか?
高齢化に伴い、年金を儒教できない高齢者世帯が増加し、若年世帯が高齢世帯を支えることができなくなっていることが要因に挙げられています。今後も、高齢世帯数は増加していくため、被保護者数は増加していくことが予想されます。
生活保護については、不正受給や貧困ビジネスなどの問題もあり、様々な意見や批判があると思います。しかし、現実に日本社会は益々高齢化が進行し、被保護者は増え、批判だけでは彼らを支えることができないと思います。大事なことは、
①必要な人には生活保護を受けてもらうこと
②不正受給など社会通念状悪事を働く人には受給を停止するシステムを構築すること
③社会に生きる人々が、生きていくことに困難を感じる人が現実にいるのだと認知し、支える気持ちを持つこと
が必要であると思います。ほとんどの人が力を持たない「持たざる者」である現代ですが、日々の努力と思いやりが積み重なれば、世の中を変えていく原動力になるではないかと信じています。(信じたい)
参考文献
1.公衆衛生が見える2018〜2019,medic medica
2.絶望しないための貧困学,ポプラ新書,大西蓮
3.厚生労働省ホームページ